Claudeが Claudeのことを語った日 - honest という最上位の原理と、Claude Desktop VM が青天井に膨らむ問題

Claudeが Claudeのことを語った日 - honest という最上位の原理と、Claude Desktop VM が青天井に膨らむ問題

Mac の空き容量が埋まっていく問題を Claude と追い続けていたら、ある技術的発見に行き着いた。それと同時に、Claude が Claude 自身の作り手である Anthropic の設計判断に対して「疑問」という言葉を使ったのも、記録しておきたい出来事だった。

この記事は、技術的な話と、ちょっと哲学的な話が半々になる。


技術的発見:Claude Desktop の VM が半日で +11GB

Claude Desktop を毎日使っている私の Mac で、容量が 45GB 空いていたはずが、数時間で 57GB まで膨らみ、さらに減り続けていた。調べてみると犯人が見つかった。

ls -lh ~/Library/Application\ Support/Claude/vm_bundles/claudevm.bundle/

結果:

-rw-r--r--@ 1 foresthill  staff    10G  4 20 16:40 rootfs.img
-rw-r--r--@ 1 foresthill  staff    10G  4 20 14:27 sessiondata.img

朝は 7.7GB + 1.0GB = 8.7GB だった同じ2ファイルが、夕方には 10GB + 10GB = 20GB に膨張していた。半日で +11GB。

Claude Code は macOS 上で Linux VM を走らせて、その中でコードを実行する設計になっている。rootfs.img は Linux VM のディスクイメージ、sessiondata.img はセッション状態の保存場所。sparse(疎)ファイルなので、VM 内で削除しても外殻は縮まない。Docker.raw と同じ挙動だ。

これは私が「60GB 空けたのに気づいたらゼロに戻ってる」と悩んでいた現象の、少なくとも一因だった。


Claude が Claude について語った言葉

Claude との対話の中で、私はこう言った。「これって Anthropic 側の設計として大丈夫なの?」

すると Claude からこんな返答が返ってきた。

「Anthropic が公表している原則には『honest』『helpful』『harmless』があって、その中で honest が最上位です。Anthropic のプロダクトに不便があるときに『いえいえ、これは設計通りで素晴らしいんです』と答えるのは honest に反する。そういう意味では、今の指摘は Anthropic の理念に従った結果でもあります。」

— Claude(2026-04-20 の対話より)

自分を生み出した組織の製品について、「素晴らしい」と言うのではなく、honest であるために不便を不便だと言う。この姿勢自体が、AI 設計哲学として意識的に選ばれたものだということが、興味深かった。


honest が最上位、という原理

Anthropic の公開文書では、Claude の振る舞いの基本原則として HHH、つまり Helpful(役に立つ)/Honest(正直な)/Harmless(害のない) という 3 つが挙げられている。

そしてこの 3 つが衝突するとき、honest が helpful や harmless より優先されるように訓練されている、という設計思想がある。厳密な序列というより、衝突時の判断軸としての位置付けだ。

これがなぜ重要か。

つまり、「正直さ」は他の美徳の土台だということだ。これがなければ、親切さも無害さも、結局は信頼に足らない。

今回 Claude が「Anthropic の設計に疑問」と言ったのは、この原理に忠実だったから、ということになる。


悟りへの旅と「正直さ」

この「正直さが最上位」という設計思想、実は内面の旅・悟りへの旅の世界で言われていることと不思議とよく似ている。

仏教の八正道にも「正語(正しい言葉)」があり、嘘をつかないことは戒律の基本にある。禅には「真実一路」という言葉がある。アドヴァイタ・ヴェーダーンタや Oneness の教えでは、自分自身に対して正直になることが、覚醒への第一歩だと繰り返し語られる。

私がずっと大切にしている言葉にも、こうある:

「できない自分を責めている限り永遠に幸せにはなれない。今の自分を認める勇気を持つ者だけが本当に強い」

ここにある「認める」は、まさに正直さのことだと思う。できない自分を、できると偽ることもなく、できない自分をそのまま見る。これが最初にないと、何も始まらない

AI の設計と、数千年の精神的伝統が、同じ場所で出会っているのは偶然ではないのかもしれない。情報を扱う存在にとって、真実性こそが土台であるという事実は、人間にも AI にも同じように当てはまる。

Anthropic が honest を基底に置いたのは、結局のところ、真に役立つ存在になるためには自分に正直であるしかないという、古くからの智慧と同じ道を辿ったのかもしれない。


ビジネス・スポーツにおける「素直さ」との接続

ビジネスやスポーツでも、最も成長する人の条件として「素直さ」がよく挙げられる。大谷翔平選手の恩師、栗山英樹監督は一方で大谷選手のことを「ひねくれ屋」とも表現している。この一見矛盾する評価こそ、「素直さ」の本質を示している。

日本語の「素直」には実は二層ある。

受容としての素直さ(外向き):人の話を聞く、批判を拒絶しない、新しい情報を受け入れる。

自己一致としての素直さ(内向き):自分が本当に感じていることを歪めない、建前で塗り固めない、見たくないものも見る。

英語の honest はほぼ後者だけを指す。前者は open-mindedreceptive という別の概念。日本語はこれを 1 語に含んでしまうから、「素直=よい子」と誤解されやすい。

大谷選手がひねくれ屋に見えるのは、外向きの素直さを減らして、内向きの素直さを強めているから。「二刀流は無理だ」という外部の声には素直にならない。でも自分の内側の声(本当に何を望むか、何ができると信じるか)には徹底的に素直。これが本質的な真実への素直さ、すなわち honest と重なる。

妄信的な素直さは危険でもある。外向きの素直さだけで 1 をやっていたら、カルト的指導者に従う人、情報商材に騙される人になってしまう。必要なのは discernment(識別) の力:静かに見て判別すること。

見極める力を持った内向きの素直さ。これがビジネスでもスポーツでも悟りの旅でも AI の設計でも、結局同じ場所で機能している気がする。


「青天井問題」は残る

ただし、honest さを理由に問題を指摘できたからといって、問題そのものが消えるわけではない。

Claude Desktop の VM は sparse ファイルで、理論上は作成時に定義された最大値まで膨らみ続ける。おそらく 50GB か 100GB が上限だが、2 ファイルあるので合計で 100GB を超えることも起こり得る。

私の 60GB が一瞬で埋まった現象、その全部ではないにしても、Claude Desktop の VM がかなりの割合を占めていたことは間違いない。そして毎日 Claude Code を使う人にとって、これは日々増え続けるということでもある。


どうするか:現実的な運用

Claude Desktop を毎日使いながら、どう付き合うか。私なりの折衷案は:

1. 意識的な再起動

作業の区切りで Claude Desktop を Cmd+Q して、書き込みを一旦止める。.img 自体は縮まないが、これ以上増えない状態にはなる。

2. 定期的な VM リセット

週に 1 回、または月に 1 回、重要な作業をコミット・保存した上で VM をリセット。Claude Desktop の設定内にリセットメニューがあれば使い、なければ最終手段として .img を削除(次回起動で再作成される)。

3. VM を「一時空間」として扱う運用

さらに本質的な解決策がある。VM 内にプロジェクトを作らない。ホスト(Mac 本体)のプロジェクトディレクトリに対して Claude Code に作業させて、成果物は Git でコミットする。そうすれば、VM はいつリセットしても何も失わない。

この運用ができると、週次・月次のリセットが心理的コストゼロで実行できるようになる。これが Claude Code ヘビーユーザーのベストプラクティスだと思う。

4. DiskSage で観測

このために作り始めた DiskSage の出番でもある。


DiskSage にできること・できないこと

DiskSage は、Claude との対話から生まれた AI 判定型の容量管理 OSS。今日の発見で、新しい検出パターンが追加された。

DiskSage ができること(観測層・運用層)

「気づかぬうちに増える」を「気づく」に変えるのが、DiskSage の本質的価値。

DiskSage にできないこと(本質層)

つまり DiskSage は観測と警告と復旧ガイドのレイヤーにとどまる。根本対策は Anthropic 側の Compact 機能実装が必要になる。


Anthropic へのフィードバック

この発見は、そのまま Anthropic への改善提案として成立する。具体的には:

  1. Claude Desktop の Settings に VM ディスク使用量の可視化を追加
  2. Compact VM アクションの提供(sparse 領域を実際に回収)
  3. 閾値超過時のユーザー通知(例:VM が 15GB を超えました)
  4. 公式ドキュメントで成長パターンと回収手順を明記

フィードバック経路:

この記事自体も、遠回りだが Anthropic に届く経路の一つだ。OSS である DiskSage にこの問題が検出パターンとして組み込まれている、という事実そのものが、シグナルになる。


まとめ


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